北方領土に関する各種資料
外務省 われらの北方領土 2010年版より抜粋
最近の日露関係

( 1 )鳩山内閣成立後の動き

 2009年9月、鳩山総理は、国連総会に出席するために訪れたニューヨークで、総理就任後初めての日露首脳会談を行いました。会談では、鳩山総理から、政治と経済を含む諸問題を「車の両輪」のように進めていくことでお互いに良い影響を与え合うことができる旨述べたのに対し、メドヴェージェフ大統領は、領土問題を含め日露関係に新たな道筋をつけるように努力したいとの立場を表明しました。また、鳩山総理から、我々の世代で領土問題を解決し、平和条約が締結されるよう大統領のリーダーシップに期待する旨述べたのに対し、メドヴェージェフ大統領は、平和条約交渉を一層精力的に行っていきたい、独創的なアプローチを発揮する用意もあるし、同時に、法的な範囲の中で議論を行うことも重要、過去の遺産を政治的に解決することは可能と述べました。

 さらに、同年11月、シンガポールで行われたAPECの際の首脳会談では、鳩山総理から、アジア太平洋地域でロシアと協力を深めていくためにも、北方四島の帰属の問題を最終的に解決できるようなロシア側の独創的な対応を期待する旨述べました。これに対しメドヴェージェフ大統領は、ロシア国内の厳しい見方や世論はあるが、鳩山政権との間で領土問題を是非前進させたいと心から思っている、自分は冷戦的な思考でこの問題を議論しても意味はないと思っている旨述べました。

 同年11月、政府が、北方領土問題に関する質問主意書に対して、従来から日本側が主張している立場に基づき「ロシア連邦が北方四島を不法に占拠している」との記述がある答弁書を閣議決定したことを受け、ロシア外務省は、「二国間協力において正常かつ相互に敬意を払う雰囲気の醸成が必要であるとの(中略)両首脳によって確認された相互理解に反する」として「受け入れられない」旨の同日付けの声明を発出しました。

 同年12月には、岡田外相がロシアを訪問し、ラヴロフ外相との間で、日露外相会談を行いました。会談において、岡田外相は、日露行動計画に基づき日露関係が進む一方、領土の帰属の問題について目に見える進展がないことが問題であることを強調し、この問題についてのロシア側の積極的な対応を求めました。これに対しラヴロフ外相は、領土問題に関し、(イ)人為的に解決を遅らせるつもりはない、(ロ)国際法及び第二次世界大戦の結果を踏まえる必要がある、(ハ)メドヴェージェフ大統領にもプーチン首相にも、双方に受入れ可能な解決策を模索する政治的意思がある、(ニ)今回の協議で一時期双方に見られた感情的なやり取りに終止符が打たれることを期待する旨述べました。

 2010年3月、カナダで行われたG8外相会合の際の日露外相会談では、岡田外相から、経済や安全保障のみならず、本質的な帰属の問題についても進展を図る必要がある、両国の国境が未画定であることが日露関係の更なる発展を妨げている旨述べたのに対し、ラヴロフ外相は、ロシア側として意識的に領土交渉を遅らせることは望んでいない旨述べました。

 同年4月の核セキュリティ・サミットの際に行われた日露首脳会談では、鳩山総理から、「車の両輪」のもう片方である領土問題について、両首脳間で本格的に議論をしていきたい旨述べたのに対し、メドヴェージェフ大統領は、領土問題は難しい問題であるが、自分はこの問題から逃げるつもりはない、両首脳間で静かな雰囲気の下でじっくり協議していきたいと応じました。

 同年6月、ムスコカ・サミットの際に行われた日露首脳会談では、菅総理から、領土問題の解決は65年以上にわたる我が国国民の悲願であり、この問題の最終的な解決のために首脳レベルで前進を図っていきたい旨述べたのに対し、メドヴェージェフ大統領は、領土問題は、両国関係の中で最も難しい問題であるが、解決できない問題ではない、双方に受け入れ可能な、建設的な解決策を模索していきたい旨述べました。

 同年11月、横浜で行われたAPECの際の日露首脳会談では、菅総理から、今回大統領が国後島を訪問したことは、我が国の立場、そして、日本国民の感情から受け入れられないとして抗議したのに対し、メドヴェージェフ大統領から、ロシア側の基本的立場を踏まえた発言がありました。その上で、両首脳は、領土問題の解決を含め、あらゆる分野での関係を強化していくことで一致しました。

 2011年2月、前原外相が訪露し、ラヴロフ外相との間で外相会談を行いました。会談では、前原大臣から、北方四島は日本の固有の領土であり、その返還を求めるという日本の基本的立場を改めて明確に伝達するとともに、メドヴェージェフ大統領による国後島訪問以降もロシア政府要人の北方四島訪問が相次いでいることについて、遺憾の意を伝達しました。これに対し、ラヴロフ外相は、従来のロシア側の立場を主張しつつ、2月7日の日本側の様々な発言が両国関係の雰囲気を悪化させたと指摘し、平和条約問題について前提条件や一方的な歴史のリンケージなしに作業を行うべきであると述べました。その上で、両外相は、これまでの両国間の諸合意に基づいて双方にとって受入れ可能な解決策を模索する必要があり、静かな環境下で協議を継続していくことで一致しました。

( 2 )北方領土をめぐるロシアの動向

 2010年後半になり、ロシア側は北方領土をめぐり日本側の立場と相容れない厳しい姿勢を明確に示すようになります。

 2010年7月、ロシア軍が択捉島において軍事演習を実施していることが発表されたため、政府はロシア側に対し抗議するとともに、演習の即時中止を求めました。

 また、同月、ロシアは、9月2日を「第二次世界大戦終了の日」として記念日に制定する法改正を行いました。これを受け、政府はロシア側に対し、今回の法改正は現在の日露関係にふさわしいとは思えず、日本国民、特に、元島民の方々の感情にかんがみれば残念である、今後、本件が日露関係に否定的な影響を及ぼさないよう適切に対応してほしい等の申入れを行いました。

 さらに、同年11月には、メドヴェージェフ大統領が、ソ連・ロシアの指導者として初めて北方領土(国後島)を訪問しました。これは、2006年8月以降、ロシア政府が実施している北方四島のインフラ整備や水産部門の発展等を目的とする「『2007年から2015年までのクリル諸島社会・経済発展』連邦特別プログラム」の進捗状況を視察するためのものと説明されましたが、我が国の立場及び日本国民の感情から受け入れられないものであり、前原外相は直ちに駐日ロシア大使を外務省に招致し、抗議を行いました。また、この問題については、同月の首脳会談及び外相会談においても、日本側の立場を伝えました。

 その後も、ロシア側においては、閣僚等が相次いで北方領土を訪問し、また、2011年2月7日の「北方領土の日」に際しても、「東京での『(北方領土返還要求全国)大会』において日本政府の指導部の口から発せられた……表現に憤慨している」との声明を発出するなど反発しました。

 このような状況を踏まえつつ、我が国としては、今後とも、北方四島の帰属に関する問題を解決してロシアとの間で平和条約を締結する、という一貫した方針に基づいて交渉を進めていく考えです。

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